

会社経営において、役員報酬の金額設定は必ず直面する問題です。
ここでは、役員報酬の決め方や注意点、算定ラインについてわかりやすく解説いたします。
役員報酬は給料とは明確に異なり、年俸制でその年俸を12ヶ月に分割して毎月支給するイメージです。
平成19年の法人税法改正により、利益操作ができないように役員報酬は「定期同額給与」が原則になりました。
つまり、事業年度を通じて毎月の支給額が同額でなければ、経費として認められません。(ただし新事業年度開始から3ヶ月以内であれば変更可能です。)
経営者の方は、事前に会社の利益を予測し、あらかじめ適切な役員報酬額を決定する必要があります。
期中で役員報酬の金額を変更した場合、「定期同額給与」ではなくなってしまいます。
具体的には支払った最低額が基準となり、超過部分は切り捨てられ経費にできません。
一方、所得税は実際に支払った額面に対して課税されるため、法人税では経費にならないのに所得税は支払わなければならないという二重の負担が生じてしまいます。
例①)12月決算で9月から役員報酬を増額した場合
1~8月:20万円
9~12月:25万円(5万円増額)
計260万円
法人税
最低ライン20万円×12ヵ月=計240万円が役員報酬になり、増額部分(5万円×4ヵ月)は経費にすることができません。
所得税
額面260万円に対して所得税が課されます。
例②)12月決算で9月から役員報酬を減額した場合
1~8月:20万円
9~12月:17万円(3万円減額)
計228万円
法人税
最低ライン15万円×12ヵ月=計180万円が役員報酬になり、減額前の額を超える部分(3万円×4ヵ月)は経費にすることができません。
所得税
額面228万円に対して所得税が課されます。
原則として期中で変更できませんが、大幅な業績悪化などで役員報酬が支払えなくなるなど、減額が認められるケースがあります。
ただし厳格な要件がありますので、減額前に必ず税理士などの専門家にご相談ください。
役員として登記していなくても、税務署から実質的に経営権限を有していると判断されると「みなし役員」扱いとなり、役員報酬とされる場合があります。(例:社長様の配偶者など)
「みなし役員」の詳細はこちら⇒「みなし役員」
原則として役員に賞与は支給できませんが事前に「事前確定届出給与」を所轄税務署に提出すれば、役員賞与を支給することができます。
ただし届出通りの支払日、支払金額を守る必要があり後から変更できません。
役員報酬の決定はその直前期の定時株主総会(または期首3ヶ月内の決議)の決議によって行います。
・会社の節税になる(役員報酬を支払った分、利益・法人税が減少する)
・役員個人の所得税、住民税、社会保険料が増加する
・従業員からの不満が出やすくなる
役員報酬を設定する際の「壁」をまとめました。
税制改正により変動しやすいため、最新情報を確認し、決定前に必ず税理士などの専門家にご相談ください。
会社が赤字の見通しである、または他に個人としての所得が多いため法人税よりも所得税を抑えたい場合は月0円がおすすめです。
会社には社会保険に加入する義務があります。
しかし例外もあり、社会保険を天引きできるだけの役員報酬がないと社会保険の加入を断られてしまいます。
社会保険の最低額は自治体により異なりますが、月12,000円程度あれば社会保険に加入できると思われます。
12,000円はあくまでも概算ですので、このラインを検討される場合は、自治体の最低報酬月額を確認し、社会保険料を支払うことができる役員報酬額に設定してください。
社会保険料は等級により支払う金額が異なりますが、その最低等級になる役員報酬が月45,000円以下です。
社会保険料の支払いを出来る限り抑えたい場合は月45,000円がおすすめです。
給与所得以外に事業所得など他の所得がある場合、給与所得控除内(650,000円)に抑える場合も月54,000円が適切です。
令和8年以降、年収が1,100,000円を超えると住民税の納税義務が発生します。
月91,000円の場合、年間1,092,000円となり1,100,000円以内に収まります。
令和8年以降、年収が1,780,000円を超えると所得税の納税義務が発生します。
月148,000円の場合、年間1,776,000円となり1,780,000円以内に収まります。
ただし、給与以外に所得がある場合は注意が必要です。
年収が8,500,000円以上の場合、遺族年金が受け取れなくなります。
年収ではなく、所得でも壁があります。
所得 = 年収 - 給与所得控除 - 所得控除(社会保険料控除や扶養控除、基礎控除など)
・所得1,000万円超 配偶者控除が対象外になります。
・所得2,000万円超 住宅ローン控除が対象外になります。
役員報酬は「収入を増やしたい」、「融資を受けたい」、「税金を抑えたい」など経営者の優先順位によって変わります。
特にこだわりがない場合は、法人税、所得税、社会保険料などのトータルの負担を最小にするバランスを重視することをおすすめします。