経営と税金は表裏一体です。
節税をするためにはまず前提として、自社の経営状態をよく把握しておく必要があります。
税金対策を頑張ったのに、決算をしてみたら赤字だったでは意味がありません。
国や自治体のために税金を多く支払いたいという方は大変素晴らしいですが、支払わなくてよいなら支払いたくないというのが、ほとんどの事業者の本音かと思います。
ここでは法人 、個人事業主の有用な税金対策をご紹介いたします。
社長の給与は適正かどうか今一度確認してみましょう。
社長の給与には所得税がかかり、会社の利益には法人税がかかります。
社長の給与が高く、会社が赤字では余分に所得税を支払っている可能性があります。
逆に、会社が大幅な黒字なのに社長の給与が少ないようであれば、法人税を支払いすぎている可能性があります。
所得税も法人税も所得(利益)が多いほど税率が高くなるので、バランスを整えることが節税につながります。
所得税、法人税をバランスよくを顧問税理士などに一度試算してもうらうのもよいでしょう。
また、給料が増えれば社会保険料(会社1/2負担)、住民税も増えます。
こちらも無視できません。
利益が出ているからといって安易に給料を増やし、社会保険料・住民税の負担が増え手元金が減り、経営を圧迫するというパターンもありますので、十分に注意が必要です。
期首から3カ月以降は役員報酬を変更できませんので、役員報酬の変更を検討するタイミングは決算後となります。
増給の際には社会保険料・住民税の負担も考慮する必要があります。
法人税には特別減税がいくつかあります。
該当するものがないか確認してみましょう。
国税庁HPリンク
日当の定義は「旅費、宿泊費に含まれていない出張中の少額の諸雑費の支払いにあてるもの」です。
つまり、出張先での飲食費などを実費精算せず、日当という形で支払う事ができるというものです。
日当は給料ではなく交通費扱いなので、個人に所得税がかかりません。
1回にあまり多くを支給すると給与と認定される可能性があることです。
社員1回5,000円、役員なら1回10,000円程度が限度でしょう。
会社で「出張旅費規程」を作成する必要があります。
キャッシュ(現預金)が減るので、慎重な判断が必要です。キャッシュに余裕がない場合はおすすめできません。
未払金や未払費用に漏れがないか、もう一度よく確認してみてください。
当月締め翌月払いの経費は電話代や光熱費など意外と多いです。
特にお給料と社会保険料は金額が大きいです。
例えば3月決算で3/20日締め、4/15日払いの3月分給料は日割計算をせず全額未払費用になります。
実費を伴わない節税です。
回収できない売掛金、貸付金などはないでしょうか。
貸倒損失により経費計上できるかもしれません。
貸倒損失には条件があります。
固定資産の明細をみて、すでに廃棄しているが記載されたままの資産はないでしょうか。
あれば、簿価(残存価格)を経費にすることができます。
また、古くて使っていないものなどを廃棄するという方法もあります。
決算期が近づくと、毎月きちんと経理処理をしている会社であれば今期は利益が出そうかどうかある程度予測がつきます。
最終月に決算賞与として社員に還元してはいかがでしょうか。
社員のモチベーション向上にもつながり、税金を支払うよりも有意義かもしれません。
役員への賞与は経費になりません。役員へ賞与を出したい場合は、あらかじめ「事前確定届出給与の届出」を所轄税務署に提出する必要があります。
臨時賞与とはいえ、毎年継続して支払わないと、かえってモチベーションを下げる可能性もあります。
キャッシュ(現預金)が減るので、慎重な判断が必要です。キャッシュに余裕がない場合はおすすめできません。
経営セーフティ共済とは、取引先が倒産した場合に、連鎖的に倒産したり、経営難に陥るなどを防止する観点で設けられた共済です。
有事の際は、無担保でお金を貸してくれます。
毎月5,000〜200,000円まで5,000円刻みで掛けることができ、掛金を全額、その年の経費にすることができます。
小規模企業共済とは違い法人でも加入ができます。
共済としてのメリットよりも最大年間480万円経費化できる節税面でのメリットの方が大きいです。
倒産防止共済に加入するには加入資格が必要ですます。
経営セーフティの加入資格
解約返戻金の受取時は、入金された時点で課税対象となり、その年は大幅に税金が増える可能性があります。
解約が40ヵ月未満だと元本割れします。
キャッシュ(現預金)が減るので、慎重な判断が必要です。キャッシュに余裕がない場合はおすすめできません。
究極の節税方法です。
法人税は累進課税ではありませんが、所得が一定以上高ければ税率があがります。
別会社を作ることにより所得を分散して節税をする方法です。
設立費用がかかりますが、以前に比べればかなり少額で会社が作れるようになりました。
新設会社は2年間、消費税が免税(条件あり)というのも大きいです。
実質同じ会社と認識されれば税務署に否認される可能性があるので、あくまでも節税のためではなく事業をわけるという認識が必要です。
設立に費用がかかります。(株式会社なら30万円、合同会社なら10万円程度)
銀行等から受けている融資と同様に、もし社長からの借入金があるのならば、その借入金に対して利息を計上し経費を増やすことができます。
(無利息でも問題ありません。)
利率は銀行等の融資の相場から3%前後が目安です。
社長借入金の金額が多ければ、ある程度の節税効果が見込めます。
社長からの借入金がないと利息は計上できません。
あまり高い利率だと否認される恐れがあります。
社長は雑所得として確定申告をする必要があります。
生命保険に加入することにより、生命保険を経費計上することができます。
生命保険契約時に契約者を会社にしておく必要があります。
保険の種類(積立など)、受取人によって経費にできない場合があります。
養老保険など、将来的に返戻される保険は入金された時点で課税の対象となり、その年は大幅に税金が増える可能性があります。
キャッシュ(現預金)が減るので、慎重な判断が必要です。キャッシュに余裕がない場合はおすすめできません。
工場であれば機械、営業で必要なら車を買うなど設備投資をします。
30万円以上のものは資産となり直接経費になりませんが、減価償却資産として数年間にわたって経費にすることができます。
設備投資をすると仕事の能率もあがり翌期は売上上昇も望めます。
減価償却費は月割計算しますので、決算月に購入すると減価償却額が少なくなりあまり節税になりません。早めに購入すればするほど節税効果が高いです。
金額が多くても耐用年数が長いとあまり節税にならない場合があります。購入前に減価償却費の試算をすることをおすすめします。
キャッシュ(現預金)が減るので、慎重な判断が必要です。キャッシュに余裕がない場合はおすすめできません。
文房具などの消耗品をまとめ買いして節税するという方法を何度か聞いたことがあります。
しかしこれは下記のようなリスクがあるため、おすすめできません。
消耗品は使用しない間に経年劣化する場合があります。
「まとめ買い」すると、その分、翌期に購入する消耗品が減るので、課税の先延ばしにすぎません。
「まとめ買い」は継続性が認められないことから、未使用の消耗品は原則、貯蔵品として処理する必要があります。(経費ではなく棚卸試算になります。)
キャッシュ(現預金)が減るので、慎重な判断が必要です。キャッシュに余裕がない場合はおすすめできません。
「青色申告承認申請書」を提出し、複式簿記で帳簿を作成すれば55万円の青色申告特別控除を受けることができます。
青色申告特別控除55万円の適用が受けられる確定申告書を電子申告により提出した場合は、+10万円の65万円の青色申告特別控除を受けることができます。(詳細は下記「電子申告で確定申告書を提出する」をご覧ください。)
簡易簿記の場合でも10万円の青色申告特別控除を受けられます。
節税をお考えであれば、まずは青色申告です。
自身で帳簿を作成することが困難であればTMK記帳代行サービスなどアウトソーシングをご検討されてはいかがでしょうか。
55〜65万円の控除で十分元をとれます。
青色申告特別控除は税金から直接控除されるわけではなく、経費に追加されるイメージです。
青色申告承認申請書は提出時期に注意が必要です。 ⇒所得税の青色申告承認申請書
2020年の確定申告書より、青色申告特別控除額が65万円から、55万円に減額されました。
ただし、電子申告により確定申告書を提出した場合は青色申告特別控除額は65万円となります。
10万円の控除額の差は、税額(5%〜45%)に換算すると5,000円〜45,000円になります。
電子申告に対応した税理士、記帳代行業者に依頼しましょう。(TMK記帳代行サービスは電子申告に対応しております。)
青色申告特別控除を受けるには、まず青色申告であることが要件になります。
まだ多くの税理士事務所は電子申告に対応しておりません。
契約前に電子申告に対応しているか確認しましょう。
ご自身で電子申告を行うことも可能ですが、ICカードリーダの購入や事前手続きに時間がかかります。
「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すれば、配偶者に給与を支払うことができます。
所得税は累進課税といって、所得が多ければ多いほど税率が高くなります。
配偶者に給与を支払い、自身の所得を配偶者に分散することにより、節税が見込めます。
青色専従者給与にはいくつか条件があります。 ⇒青色事業専従者給与に関する届出(変更届出)書
青色事業専従者給与に関する届出書は提出時期に注意が必要です。
青色専従者給与を支払う場合、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用は受けられなくなります。
節税という訳ではありませんが、個人事業主の方は経費の見落としを散見します。
特に事業と家計が一緒になっているものは、合理的に事業按分することにより何割かは経費にすることができます。
家賃またはローン利息、光熱費、電話代、車の費用など、経費になるものがないかよく確認しましょう。
ふるさと納税とは、任意の地方自治体(市区町村など)に寄付金を支払うと実質負担額2,000円(寄付した額−2,000円が所得税や住民税から控除されます)で地域の人に喜んでもらえるうえにお礼品も貰えるという制度です。
以前は最大、負担額の8割程度の返礼品が望めましたが、現在は国により規制が入り、返礼品は負担額の3割以下となったため節税効果が低くなったと言わざるを得ません。
それでも2千円の負担で節税対策を得られるのでやらない理由はありません。
所得とふるさと納税額によって負担額が2,000円を超える場合があります。
シミュレーションなどを参考にしてみてください。
小規模企業共済とは、 廃業後の生活のために退職金を準備するための共済です。
また、積立金額に応じた貸付制度があります。(銀行よりも利率が低く、難しい審査もありません。)
毎月1,000〜70,000円まで500円刻みで掛けることができ、その年に払い込んだ掛金が全額、その年の所得控除になります。
小規模企業共済 には加入条件があります。
共済金や解約金などの受取時は、受取方法により、所得税の課税対象となります。
解約が20年以内だと元本割れします。(廃業、法人成など一定の事情であれば元本割れしません。)
解約金の受取時は、一括だと「退職所得」、分割だと「公的年金等」になります。
キャッシュ(現預金)が減るので、慎重な判断が必要です。キャッシュに余裕がない場合はおすすめできません。
iDeCoとは、「小規模企業共済」と同様、自分自身で退職金を準備するための仕組みです。
「iDeCo」と「小規模企業共済」のどちらか片方と悩んでいる場合は、中途解約可能で貸付制度のある「小規模企業共済」をおすすめいたします。
職業により毎月の上限額が異なります。(12,000円~68,000円)
その年に払い込んだ支払額が全額、その年の所得控除になります。
iDeCoには加入条件があります。
解約金の受取時は、一括だと「退職所得」、分割だと「公的年金等」になります。
60歳まで解約できません。
キャッシュ(現預金)が減るので、慎重な判断が必要です。キャッシュに余裕がない場合はおすすめできません。
「国民年金基金」とは「国民年金」とセットで行う所得保証制度です。
「iDeCo」との違い・・・「iDeCo」は有期年金なのに対し、「国民年金基金」は終身年金で、支給開始の年齢が設定できるなど柔軟性もあります。
「個人年金(民間)」との違い・・・「個人年金」の所得控除は生命保険料控除(限度額8万円)なのに対し、「国民年金基金」は社会保険料控除なので、その年に払い込んだ支払額が全額、その年の所得控除になります。
国民年金基金には加入条件があります。
長生きしないと元本割れします。
一度加入すると、任意で脱退することができません。
キャッシュ(現預金)が減るので、慎重な判断が必要です。キャッシュに余裕がない場合はおすすめできません。
会社を設立して節税します。
個人事業主が支払う所得税は、前述の通り累進課税といって、所得が多ければ多いほど税率が高くなります。
そのため、一定以上の所得があれば法人化した方が税金が安くなります。
ボーダーラインは所得400〜500万円ぐらいのようです。
詳細はこちらをご覧ください。 ⇒法人か個人事業か
設立に費用がかかります。(株式会社なら30万円、合同会社なら10万円程度)
上記「法人の節税」のうち、下記は個人事業主にも当てはまります。