ここまで順調に成長してきたが、このあとどう売上を伸ばせばいいか分からない。
売上は順調に伸びているが、利益が落ちてきている。
色々な事業に手を出しているが、何が儲かっているかわからない。
利益が出ているのに、なぜか資金が不足している。
事業が上手くいっていない原因を特定することは難しいですが、こういった問題に直面する多くの経営者が会計を税理士や記帳代行業者に完全に任せてしまっています。
なんのために税理士に依頼しているんだと思う経営者もいるかもしれませんが、優秀な税理士や記帳代行業者がいくら経営のお手伝いをしようとしても、その大元である情報源は経営者本人であり、一番会社やお店のことを理解しているのも経営者本人です。
取引先に、毎年何千万という赤字を作っていた製造会社を、先代から引き継いで二年で黒字に変えた若社長がいました。
その若社長が何をやったかというと、最低限の会計知識を勉強しただけです。
それにより、作れば作るほど赤字になっている製造分野に気づき、この分野を縮小し、逆に利幅の大きい修理をメインにすることにより赤字を改善しました。
会計の知識があれば、現場レベルで今何が必要で、何が不要かがわかってくると思います。
税理士でも数字上のアドバイスはできますが、例えば税理士は売上が減っていることは分かりますが、ではなぜ売上が伸びないのかまではわかりません。
これを解決するためには高額なコンサル業者に依頼するか、経営者本人が会計の勉強をする他ないですが、ここでは「経営者が最低限知っておくべき会計知識」として、もっとも重要である「試算表の見方」について簡潔にご説明いたします。
なお、ここでいう経営者とは個人・法人を問わず事業を経営している方を指します。
試算表は主に【貸借対照表】と【損益計算書】から成り立っており、事業全体の数字が全て記載されています。
大きな視点から事業を把握することができます。
以下は各項目の簡単な説明です。
資産=負債+資本
貸借対照表には、設立から現在までの財政の累積が記載されています。
事業活動をしていれば前期に比べ、各科目の残高が増減すると思いますが、その増減の理由を調査し、問題があるのかどうか確認することが重要です。
1年未満に動きがある債権などの資産(現金、預金、売掛金、棚卸資産など)
1年以上保有する資産
・有形固定資産・・・目に見える資産(建物、車、機械など)
・無形固定資産・・・目に見えない資産(特許権、借地権、電話加入権など)
・投資その他の資産・・・有形固定資産、無形固定資産のどちらにも該当しない固定資産(出資金、敷金、投資有価証券など)
支払った時だけではなく、数年に渡ってその効果が及ぶ資産(創立費、開業費、ソフトウェアなど)
1年未満に動きがある債務などの負債(支払手形、買掛金など)
1年以上保有する負債(長期借入金など)
利益の累積です。
繰越利益剰余金(個人事業の場合は元入金)は設立または開業以来の利益の累積です。
赤字であればマイナスで表記されます。
黒字の場合 収益=費用+利益
赤字の場合 収益+利益=費用
損益計算書は財務諸表の一つで、その事業年度の経営成績が記載されています。
こちらも貸借対照表と同様に、前年同月と比べ増減があった科目の、その増減があった理由を調査することが重要です。
【売上】−【売上原価】
粗利(あらり)とも言います。
会計ソフトにもよりますが、試算表には売上総利益の横などに原価率(または利益率)なども表示されています。
原価率が低ければ低いほど、効率よく利益を捻出していることになります。
売上に対して売上原価(原価率)が適正かどうか確認し、利益率が低い商品はないか、原価率が高すぎる場合は、売上価格や仕入先の見直しが必要です。
業種、年度によって平均や基準、目標値が変わってきます。
「原価率」と自分の業種、例えば「飲食業」、「平均」や「目標」などのキーワードをインターネットで検索すれば、目安となる数字が出てくると思いますので、ぜひ一度ご確認ください。
【売上総利益】−【販売費及び一般管理費】
売上から売上原価と経費を引いた、本業の儲けが分かる利益です。
最も注目すべき利益と言えます。
ここがプラスでないと、その事業は上手くいっていない可能性が高いです。
支払が嵩んでいる経費はないか、前年同月と比較して増減比が大きい科目があれば原因を調査しましょう。
金額や前年比だけでなく、構成比(売上に対しての%)も重要です。
販売費及び一般管理費とは、いわゆる経費のことです。
【営業利益】+【営業外収益】−【営業外費用】
営業外収益・・・通常の営業以外の収入(利息や雑収入など)
営業外費用・・・通常の営業以外の支出(支払利息など)
通常の営業以外の収支を含めた利益がわかります。
借入金の利息などもここに含まれますので、融資を受けている場合は営業利益よりも重要な指標になる場合があります。
経常利益+【特別収益】−【特別損失】
特別収益・・・一時的な収益(保険の解約金など)
特別損失・・・一時的な損失(災害の損失など)
この金額がいわゆる会社の利益です。
利益は出ているか、赤字なら原因はなにか調査しましょう。
事業種目にもよりますが、目標は売上の10〜20%です。
直接、試算表には記載されていませんが、試算表の数字を使って算出する重要な指標をいくつかご紹介します。
詳細はこちら⇒【自己資本比率】
詳細はこちら⇒【損益分岐点】
黒字会社は平均的に【人件費】は【売上総利益】の50%、【販売費及び一般管理費】は【売上総利益】の40%と言われております。
その他にも家賃は売上の8%以下が理想、広告費が売上の20%を超える会社は倒産するなど、さまざまな経営理論が存在します。
例えばサービス業などは売上原価がかからない分、人件費は多いなど、業種によっても変わってくるので一概には言えませんが、どれもまず「試算表の見方」がわからないとスタートラインにすら立てません。
売上の数字ばかりに目を奪われず、今一度、自分の事業を見つめ直してみてはいかがでしょうか。