企業を起こす際、開業準備などいろいろ大変ですが、その中の一つに決算月を決めるという作業があります。
経験上一番多いのは、決算月を設立から1年後に設定するケースです。
それがダメという訳ではありませんが、決算月を意図的に決定することにより、その後の経営が有利になる場合があります。
今回は中小企業を対象に、決算月を決定する際、判断材料としていただきたい点をいくつかあげたいと思います。
年間を通して収入や支出が安定している事業もあれば、極端に月に偏る事業もあります。
決算後、二ヵ月が法人税や消費税の納付期日です。
仮に、7月に支出が多い事業が、5月決算にするとどうなるでしょうか。
7月は通常の支出が多い上、加えて税金を支払うとなると、資金繰りが厳しくなるでしょう。
さらに、通常は賞与の至急月も7月です。
これらの支出をうまく年を渡って分散させるという意図で、決算月は支出が重なる時期を外すという考え方もあります。
年間を通して収入や支出が安定している事業もあれば、書き入れ時などといった、いわゆる繁忙期のある事業もあります。
繁忙期を決算月にして、社員を追い込み、モチベーションを向上させ売上の上乗せを狙うという方法もあります。
逆に、繁忙期を外すという選択もあります。
繁忙期では売上が読みにくいので、予想以上に売上が出た場合、税金資金の捻出に苦労する場合があります。
あえて繁忙期を外し、比較的売上が安定している月を決算月にすることで、ゆっくりと棚卸しなどの決算準備、決算対策をするという考え方もあります。
繁忙期は多忙のあまり申告がおろそかになる可能性がありますので、個人的には繁忙期を外す方をおすすめします。
事業形態にもよりますが、繁忙期は売上が増加するので売掛金が多くなり、そのため繁忙期の翌月は売掛金の回収が増え、現預金が増えます。
繁忙期の翌月を決算期にすることにより、決算書の現預金残高が増えるため銀行融資の面では有利になる場合があります。
新規開業の個人事業者及び新設法人(資本金1,000万円以下)については、最初の2期間(事業年度が1年に限る)は、消費税の免税事業者になります。
つまり、2月に開業したが、決算月を3月にしたい場合、第一期が2〜3月(2ヶ月)、第二期が翌年1年間となり、消費税の免税期間が計14ヶ月となります。
最高で24ヶ月の免税期間ですが、決算月を開業月のすぐ後にすると、免税の恩恵を受けられる期間がそれだけ短くなります。
個人的には、長い目で見て決算月を決めるべきかと思いますが、決算月にまったくこだわりがない場合、こういった観点で決めるのもよいと思います。
5月のゴールデンウイーク、8月の夏休み、9月のシルバーウイーク、12、1月のお正月など、大型連休があるとその分、滞った仕事の処理に追われるため、決算の時期が重なると負担になるかもしれません。
税理士事務所は2、3月の確定申告時期が忙しいです。
ですので、2、3月に申告期限を迎える12月、1月決算(決算月から2ヶ月後が申告期限となります。)はどうしても合間というか後回しになってしまいがちです。
また、年度末である3月を決算期にしている会社が多く、申告期限である5月も忙しいです。
5月までに処理が終わらなかった仕事は6月に繰り越しますので、6月も比較的忙しく、同じ理由で4月も忙しいです。
トータルすると12〜6月の間はどこの税理士事務所も比較的忙しいはずです。
税理士事務所が多忙だと、決算に時間がかかるという欠点があります。
TMK記帳代行サービスではそういうことはないですが、税理士事務所によっては1月決算など、断るケースもあるそうです。
報酬を多く払えば優先的にやってもらえるかもしれませんが・・・。
7月以降は徐々に仕事に余裕がでてきます。
11月決算は1月の年末調整と重複し、税理士事務所目線で言うと、税理士事務所がスピーディーかつ丁寧に対応してくれる決算月は5〜9月といえるでしょう。
煩雑になりましたので、下記にまとめました。
1月決算(申告期限3月)確定申告
2月決算(申告期限4月)前月の影響で多忙
3月決算(申告期限5月)3月決算社多い、ゴールデンウイーク
4月決算(申告期限6月)前月の影響で多忙
5月決算(申告期限7月)おすすめ
6月決算(申告期限8月)夏休み
7月決算(申告期限9月)シルバーウィーク
8月決算(申告期限10月)おすすめ
9月決算(申告期限11月)おすすめ
10月決算(申告期限12月)年末調整、お正月
11月決算(申告期限1月)年末調整、お正月
12月決算(申告期限2月)確定申告
今までは決算月、事業年度の終了の月について考察してきましたが、実は開始の日に一つ、節税ポイントがあります。
事業年度は普通1年に設定しますが、決算月をいつにするかの関係で、初年度は1年未満になるケースが多いです。
では、4/15に事業を開始し、決算を8/31とした場合、税金はどうなるのでしょうか。
事業期間は4ヶ月半ですので、この場合「半」は切り捨てられて4ヶ月分の税金を支払うことりなります。
基本的に、月や税金など端数が出る場合、納税者が有利になるように切り捨てられることになっています。
これを逆手にとると、4/1に事業を開始すると事業期間が5ヶ月、4/2に事業を開始すると事業期間は4ヶ月となり、1日の差で1ヵ月分税金が違うということになります。
赤字でも法人税等は70,000円かかりますので、1ヵ月分だと5,800円になります。
つまり、開業日をその月の一日でなく二日にするだけで最低でも5,800円の節税になります。